足の筋肉が急に収縮することで起こる「足がつる」という症状(こむら返り)。
妊娠前にはまったくつったことがなかったのに、妊娠をきっかけにつりやすくなったという人も少なくありません。なぜ妊娠すると足をつりやすくなってしまうのでしょうか?
足がつる原因や予防法、つってしまったときの対処法についてご紹介します。
妊娠中に足がつりやすいのはなぜ?
妊娠中に足がつりやすくなってしまう原因としては、以下のようなものがあります。
・体のバランスの変化
・運動不足
・栄養の偏り
・貧血
・冷え
・骨盤のゆるみ
体のバランスの変化
お腹が大きくなってくるとそれを支えるために姿勢が変化して、足や腹筋、背筋への負担が大きくなります。体重も増加していますので負担はより大きくなり、特に負荷の大きい下半身は血流も悪くなってしまいます。
筋肉への負担や血流の悪化が続くと、腹筋や背筋、骨盤の周りの筋肉とも繋がっている足が筋肉疲労を起こし、足(特にふくらはぎ)がつりやすくなってしまいます。
運動不足
妊婦さんは運動量も制限され、体が重たくなったり、今まで行っていた日常の様々な動作ができなくなり、運動不足になりがちです。移動にも電車や車を使用しているとますます運動不足になり、足の筋力が低下してしまい、足がつりやすくなってしまいます。
栄養の偏り
妊婦さんは常に赤ちゃんに優先的に栄養を送り続けているため、栄養不足になりがちです。
特に赤ちゃんの成長に必要不可欠なカルシウムやマグネシウムなどのミネラル、日本人に不足しがちな栄養素であるビタミンB1が不足しやすく、栄養不足から足がつりやすくなってしまいます。
また、妊娠で汗っかきになってしまったという人も多くいらっしゃいますが、大量に汗をかくことでも体内のミネラルが排出され、ミネラル不足に陥ってしまいます。
貧血
赤ちゃんに血液を送り続けている妊婦さんは貧血になりやすく、貧血が原因で足をつりやすくなってしまうこともあります。
冷え
体が冷えると筋肉が硬直し、つりやすくなってしまいます。
妊娠中は赤ちゃんに十分な血液を送るために、母体の末端まで血液が行き届きにくい状態になっています。さらに運動不足で血流が悪化しやすく、足が冷えがちです。
骨盤のゆるみ
妊娠後期になると、赤ちゃんが大きく、重く成長するのにあわせて骨盤が内側から広げられていきます。それ自体は自然な現象であり、赤ちゃんが順調に成長している証拠です。
しかし、それにより骨盤が歪んでしまったり、骨盤のゆるみに合わせて横に引っ張られた足の筋肉が元に戻ろうとすることで足がつってしまうことがあります。
足がつらないようにするためには
足がつらないようにするためには、足がつってしまう原因に合った対策をする必要があります。
適度な運動
妊娠中は激しい運動はできませんが、適度な運動は必要です。
マタニティヨガなどのゆったりとした運動を行ったり、軽い散歩をしたり歩いて買い物をするなど、日々の生活の中でウォーキングを行いましょう。
ただし、無理は禁物です。お腹の張りを感じたら休憩しましょう。
マッサージ
入浴中や入浴後、就寝前などにマッサージをすることで、血液の循環をよくすることができます。
ふくらはぎを下から上に向かってさすったり、膝の外側の出っ張った骨の下側にあるくぼみの「陽陵泉(ようりょうせん)」というツボを痛気持ちいいくらいの力加減で押すのも効果があります。
食事を工夫する
カルシウムやマグネシウムといったミネラル類やビタミンB1がしっかりと補給できる食生活を心掛けましょう。
カルシウムは乳製品や小魚、パセリなど、マグネシウムは豆類や海草類など、ビタミンB1は豚肉の赤みや玄米、ぬか漬けなどに多く含まれています。飲み物はミネラルが豊富な麦茶やルイボスティーがおすすめです。
貧血対策には、小松菜やほうれん草、海草類などに多く含まれる鉄分を積極的に摂ることも重要です。
体を温める
体が冷えて血行が悪くなるのを防ぐため、自宅にいるときもレッグウォーマーやブランケットを浸かって体を温めるようにしましょう。寝てる間もレッグウォーマーを履いておくのもおすすめです。
ただし、締め付け過ぎると逆に血行が悪くなってしまうので、締め付けのないレッグウォーマーを選んでください。
生姜やシナモンといった血行を促進する食品を積極的に摂ったり、ゆっくりと半身浴をするのも効果的です。
骨盤を締める
腹帯や骨盤ベルトで骨盤の広がり過ぎを抑えると効果的です。ただし締め過ぎると逆に足をつってしまう原因になり、骨盤ベルトも装着するのにコツが必要な場合もありますので、産婦人科医に相談するなどして正しい使用方法を教えてもらいましょう。
もし足がつってしまったら…
それでも足が吊ってしまったときに、短時間で元に戻す方法をご紹介します。以下の対処は、痛みが治ったあとのぶり返し防止にも効果的です。
力を抜き、筋肉を伸ばす
こむら返りは筋肉が収縮することで起こるので、筋肉を伸ばして上げることで収まります。足がつると痛さのあまりつい力を入れてしまいますが、力を入れるのは逆効果になりますので力を抜きましょう。
それでも改善されない場合は、ストレッチを行います。
アキレス腱を伸ばして、つま先を体に引き付けるようにします。慌てず無理せずゆっくりと筋肉を伸ばしましょう。足先を手で持って動かしても構いません。
また、足首を回すことでも足の緊張状態を解くことができます。
患部を温める
蒸しタオルや温熱シートなどでつってしまった部分を温めることで血行を促進します。特に痛みの強い部分を重点的に温めましょう。
こんな時は病院へ
あまりにも頻繁に足がつってしまったり、症状が酷いとき、症状が長く続くときは病院を受診しましょう。妊婦さんでも飲めるお薬や漢方を処方してもらうことができます。
また、足がつってしまうのは栄養不足や血行不良のサインであることもありますが、ほかの病気の症状の一つである恐れもあります。
足がつるだけと軽く考えず、以上を感じたら専門医に相談することが大切です。